ヨガを深める「八支則」とは?実践方法や考え方を解説

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八支則(はっしそく)とはヨガの聖典『ヨーガ・スートラ』に書かれている、ヨガの基本的な教えで、どのようにヨガを実践していけばよいのか、という8つの段階が示されています。

『ヨーガ・ストーラ』については、下記の記事をご参照ください。

その八支則のなかでも、 「ヤマ」と「ニヤマ」は、日々の社会的・個人的行動の規範となり、もっとも基本的で実践が難しい教えといわれています。本場インドでは、「ヤマ」「ニヤマ」を実践できなければ、ヨガのアーサナ(ポーズ)をするスタート地点にさえ立ってない見なされることもあるほどです。

この記事では、ヨガの深めるために欠かせない「八支則」について解説していきます。

1.ヤマ

Ahimsa satyasteya brahmacaryaparigraha yamah.
(ヤマ〔禁戒〕は、非暴力【アヒンサー
、正直【サティヤ】、不盗【アスティヤ】、禁欲【ブラフマチャーリヤ】、不貪【アパリグラハ】より成る。)

ーヨーガ・スートラ 2章30節

ヤマは「禁戒」、すなわちアシュターンガ・ヨーガ(八支分のヨーガ)の最初の一支です。書かれてあるとおり、ヤマは「アヒンサー」「サティヤ」「アスティヤ」「ブラフマチャーリヤ」「アパリグラハ」の5つで成り立っています。下記で、一つひとつの特徴を見ていきましょう。

アヒンサー(非暴力)

アヒンサーは、「苦痛を引き起こさないこと」です。「不殺生」といったように訳す場合もありますが、殺すことと苦痛を引き起こすことは異なるといえるでしょう。苦痛を引き起こすことは、殺すことよりも悪いとされる場合があります。また、言葉や思いによっても、苦痛は引き起こされます。

サティヤ(正直)/アスティヤ(不盗)

サティヤは、「正直」「嘘を言わない」こと。アスティヤは「盗まない」ことです。これらの要素は大変初歩的なことのように見えますが、実は重大なことといえます。なぜなら、これらのことを完全に全うすることは、実はとても難しいことだからです。

ブラフマチャーリヤ(禁欲)

ブラフマチャーリヤは、「禁欲」あるいは独身生活を守ることです。もともとはエネルギーの無駄使いをせず、生涯を独身で過ごすことなどが説かれていたとされています。現代では、利己的な欲を無闇に満たそうとすることを避けるなどの意味もあるようです。

アパリグラハ(不貪)

アパリグラハは、二通りの解釈が考えられます。一つは「物を貪らない」。二つ目は「贈与を受けない」ことです。物を貪らないというのは食欲ではなく、「適切に使うことのできる範囲を超えた蓄積をしないこと」です。

2.ニヤマ

Sauca samtosa tapah svadhyayesvarapranidhanani niyamah.

(ニヤマ〔勧戒〕は、清浄・知足・受け入れても苦痛を起こさない苦行・霊的書物の研究・自在神への祈念【自己放棄】より成る。)

ーヨーガ・ストーラ 2章32節

二つ目の支分は「ニヤマ〔勧戒〕」。遵守すべき事柄です。

シャウチャ(清浄)

シャウチャーは、自身の身体と心を常にきれいな状態に保つことをいいます。身だしなみを整えるだけでなく、自分の身の回りの空気を清潔に保つこともこれにあたります。心の清浄さも意識すべき点で、他人への嫌悪や嫉妬などのネガティブな感情を排除するように心がけていくことが大切です。


サントーシャ(満足・知足)

サントーシャとは、「足るを知る」という意味で、現状に満足することをいいます。現在自分の置かれている環境や人間関係、自分の持っている能力などをありがたく思い、受け入れることで状況が好転していくという教えです。

ヨガの基本思想の一つに、「因果律」があります。これは、「すべての出来事は、原因から生じた結果であり、ここには一定の必然的理由があり、原因なくては何ごとも起こらない」という原理です。もし今とても辛い状況であるとしても、それは自分の成長や成功のためのチャンスであるかもしれず、そこに何かしらの意味を見出すことともいえるでしょう。

つまり、あるがままのそれ自体ですでに完璧だと考えることで、幸せと心の安定が得られるということです。人間の欲望は尽きることがなく、日々変化する周囲の状況や物事に幸せを求める限り、本当に幸せは見つからないでしょう。自分の現状に感謝し満足することが、本当の幸せへの近道です。


タパス(苦行・自制)

タパスは「強さ」の教えです。タパスとは、困難や苦痛を受け入れることです。人間は、生きていく限りは避けられない困難や問題に日々直面します。その苦痛を自分の成長のエネルギーに変えることで、人は強くなるでしょう。タパスは、心を清浄で、堅固にするためには、苦しみや痛みをも受け入れる必要があるという教えだといえるでしょう。


スヴァディアーヤ(読誦・学習・向上心)

スヴァディアーヤは「霊的な研究」という意味で、聖典やマントラなどの研究を指しますが、そのほか、各個人が手解きを受けた「サーダナ(精神修習・修行)」を行うことともいえます。

大切なのは、自分の精神を良い方向に導く書物や文章を読むことです。そこで得た知識を実生活に活かし、さらには智慧に昇華させ、人格を成長させることが「スヴァディアーヤ」の目的です。


イーシュワラ・プラニダーナ(自在神記念・信仰)

イーシュワラ・プラニダーナは、自身のすべてを「主(宗教では「神」とも略される)」または人類に捧げる生活と言う意味です。これは、自分自身に備わっている神性を信じることともいえます。

それはあらゆる物に対し感謝の気持ちを持ち、献身的な心をもってして接することでもあります。椅子に触れるとき、皿を洗うとき、スプーンを棚に戻すとき。すべてを優しく慎重に行えば、それは奉仕にほかなりません。

そのほか、自分自身ではどうすることもできない自然の力や時代の変化などを受け入れ、身を委ねることも「イーシュワラ・プラニダーナ」にあたるとされています。

3.アーサナ

Sthira sukhamasanam.

(アーサナ〔坐法〕は、快適で安定したものでなければならない。)

ーヨーガ・スートラ 2章46

アーサナとは、快適で安定感をもたらす姿勢をいいます。基本的には瞑想を深めるための座法といわれますが、快適さと安定感を得られるものであればどんな姿勢でも、「アーサナ」といえます。そのため、自分にとって快適な一つのポーズを完全にこなせれば、十分でしょう。

しかし、快適で安定したポーズを見つけるというのは言葉で言うよりもずっと困難な場合もあります。身体が健康で、こわばりや緊張から自由な状態でないと、快適と安定感は得られないからです。

4.プラーナヤーマ

Tasmin sati svasaprasvasayorgativicchedah pranayamah.

(それ【安定した坐位】が得られたならば、呼気と吸気の活動が制御されねばならない。これがプラーナーヤーマ〔調気〕である。)

ーヨーガ・スートラ 2章49章

プラーナヤーマは、瞑想を深めるため呼吸を整えることをいいます。「プラーナ」は生命エネルギーを指し、「プラーナヤーマ」は、呼吸をコントロールすることです。

姿勢がマスターできたら、吸う息と吐く息の動きをコントロールすることによって、プラーナをコントロールする訓練を行います。呼吸は、いかなる乱れもなく、静かな状態で制御されていることが大切です。

呼吸と心と体はつながっており、呼吸が落ち着き安定してれば心の安定も保つことができるされています。

5.プラティアーハーラ

Svavisayasamprayoge cittasya svarupanukara ivendriyanam pratyaharah.

(諸感覚がその対象から撤退し、いわば心の本質を模倣するときーそれがプラティアーハーラ〔制感〕である。)

ーヨーガ・スートラ 2章54節

プラティアーハーラは、心を制御するための方法であり、「感覚への意識を深めて繊細に感じること」を指します。外側に向く五感の知覚を内側に持っていき、内的感覚を高めることが大切です。

知覚を内側に向ける修練を積み重ねることで、深い瞑想を味わうことができます。外の情報でなく、自分自身の内側の感覚に意識を向け続けましょう。

この行いは、日々起きるさまざまな出来事や問題に対し振り回されず、何が起きてもぶれない堅固な精神の形成につながります。

6.ダーラナー

Tatah kslyate prakasavaranam. Dharanasu ca yogyata manasah.

(その結果、内なる光を覆い隠していた面紗が破壊される。そして、心がダーラナー〔集中〕への適正を得る。)

ーヨーガ・スートラ 2章52/53節

Desabandhascittasya dharana.

(ダーラナー〔集中〕とは、心を一つの場所、対象、あるいは観念に縛りつけておくことである。)

ーヨーガ・スートラ 3章1節

ダーラナーは、心や意識を一つのもの、場所に留めておく行いです。心を「しつけている」ともいえるこでしょう。ダーラナーは、まさに瞑想の始点といえるでしょう。

心・意識を集中させればさせるほど、一点に向かう大きなエネルギーが生まれます。

7.ディアーナ

Tatra pratyayaikatanata dhyanam.

(瞑想〔ディアーナ〕とは、そうした対象へ向かう認識の絶え間ない流れである。)

ーヨーガ・スートラ 3章2節

ディアーナは、意識の絶え間ない流れです。意識が積極的な努力なしに、一方向に深く集中して流れている状態です。

ディアーナは、「プラティヤハーラ(心の制御)」と「ダーラナ(集中)」が深まっている状態ともいえます。自分とそのほかの境目がなくなり、雑念から解放された無我の境地です。

8.サマーディ

Tad evarthamatra nirbhasam svarupa sunyam iva samadhih.

(三昧〔サマーディ〕とは、【瞑想という】形がなくなったかのように【瞑想の】対象のみが輝き出るときの瞑想をいう。)

ーヨーガ・スートラ 3章3節

サマーディは、ヨガの最終目標であり、「悟り」です。煩悩からの解放で、「解脱」ともいえます。

具体的には瞑想が深まり、集中の対象に対して一体感を感じている状態を指します。瞑想状態を長い時間維持できるようになれば、「サマーディ」の状態に入るとされています。

まとめ

以上、ヨガを行ううえで大切な8つの教えを紹介しました。この八支は、いずれも同等に大切な教えです。すべてを着実にこなしていけば、最終的に深い瞑想状態である「サマーディ」の境地を味わえるとされています。

これらの教えは基本的なようであり、実践し続けるのが困難なものばかりです。また、慌ただしい日々を生きていれば、どうしても忘れがちになってしまうものでもあるでしょう。

8つの教えを一つひとつ丁寧に意識していくことで、深くヨガを実践することが可能になります。ぜひ、日々八支則を意識して過ごしてみましょう。